大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)2705号 判決
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〔争点〕原告は、その所有にかかる本件建物を被告に対し賃料を昭和三六年七月末日までは一カ月金六、〇〇〇円と定めて賃貸していたが、近年著しく地価が高騰したことを理由に、同年六月頃、同年八月一日以降賃料を一カ月金九、〇〇〇円に増額する旨通告し、更に昭和三八年五月二五日、同年六月一日以降賃料を一カ月金二〇、〇〇〇円に増額する旨意思表示をした。
これに対し被告は、右増額の根拠を争つた。
本訴訟において鑑定人は第一次増額がなされた当時の適正賃料を一カ月金一六、一二四円であると鑑定したので、本判決は、右増額における一カ月金九、〇〇〇円とする旨の意思表示は適正な金額の増額要求である旨判示したが、第二次増額において適正賃料を判断するに当たつては、一カ月金九、〇〇〇円を基準として、第一次増額以後に生じた経済事情の変動の度合いを考慮して決定すべきであるとして、第二次増額における賃料は一カ月金一二、〇〇〇円とするのが相当であると判示している。
<27>事件(大阪地方裁判所昭和三七年(ワ)第四八八四号)と合わせて検討すると参考になろう。
〔判決理由〕四2、昭和三八年五月の増額請求について。
賃料の増額を請求しうる根拠は、いわゆる事情変更の原則であつて、従前の賃料額を決定した当時の経済事情がその後変動したために、従前の賃料額をもつてしては、その後の経済事情の変動と釣合わなくなつたことを理由とするものである。したがつて、新賃料額は、従前の賃料額を基準として、これにその後の経済事情の変動の度合を考慮して決定すべきものであつて、従前の賃料額が、その決定時における鑑定人の鑑定する適正賃料額より低かつた場合でも、従前の賃料額を基準とすべきものであり、特別の事情のない限り、これを無視して、当然に新賃料額決定時における鑑定人の鑑定する適正賃料額に増額できるものではない。
本件における昭和三八年五月の増額請求金額の当否は前項で認定した昭和三六年八月の賃料一ケ月九、〇〇〇円を基準として、その後の経済事情の変動を考慮して判断すべきものである。
鑑定人中村忠の鑑定結果によると、大阪国税局が査定する本件建物の敷地に関する路線価が昭和三六年度から昭和三八年度までの間に一・八五倍に上昇していること、右敷地の地価が右期間の間に一・四倍に上昇していること、本件建物の評価額は年数を経ることにより当然下落しているが、被告の管理による建物の現況は耐用年数延長の良好な状態にあること、同鑑定人が鑑定した本件建物の昭和三八年六月当時の適正賃料額は、昭和三六年七月当時のそれの一二倍であること、以上の事実が認められる。これらの事実を斟酌し、諸般の事情を考慮して、昭和三六年八月以降の賃料が一ケ月九、〇〇〇円であることを基準にして判断すると、昭和三八年六月以降の本件建物の賃料は、一ケ月金一二、〇〇〇円であるとするのが相当である。よつて、原告がした前記増額請求は、右金額の限度で効力を生じたものと認めることができ、本件建物の賃料は、昭和三八年六月分から一ケ月一二、〇〇〇円であるというべきである。 (高橋欣一)